スペイン人の伴奏で歌うときに意識していること

 過去に何度かスペイン人と一緒に演奏をしたことがあります。僕は日本人であり、彼らとはリズム感が異なるため、初めて演奏したときは本当に何もできませんでした。この問題を解決していなかったら、または日々そのリズムを体に取り入れることを習慣にしていなかったら、先日の万博のようにスペイン人の伴奏で歌うことはできなかったと思います。

その練習法について詳しく語る必要はありませんが、意識するようになったきっかけについてお話しします。二回目のバルセロナ渡航時、日本語の「ルンバ・カタラーナ(元気な死人2.0)」をレコーディングしたときのことです。一緒に制作した「Rumba Trumba」のドラマーであるRamonが、二日間にわたり二回、「ルンバ・カタラーナ」のライブへ連れて行ってくれました。会場へはRamonと歩きながら会話をしつつ向かいました。

僕はスペイン語をほとんど話せませんが、話題がルンバに関することばかりだったため、二回目のバルセロナ渡航ということもあり、事前に「ルンバ・カタラーナ」の歴史を予習していたこともあって、彼の話している内容の半分ほどは理解できたと思います。コンサートは、それぞれ異なる個性を持った「ルンバ・カタラーナ」でした。その後、バルセロナで「ルンバ・カタラーナ」の名付け親であるGato Pérezについて教えてもらいました。実は「ルンバ・カタラーナ」として名前がつけられる以前は、このジャンルには特定の名称がなく、単に「カタルーニャのルンバ」と呼ばれていたそうです。

さて、「スペイン人の伴奏で歌うときに意識していること」ですが、僕はある1シーンのGato Pérezのリズムの取り方を参考にしています。

Gato Pérezは、カタルーニャ・ルンバの音楽スタイルを発展させたことで知られています。カタルーニャ・ルンバは、ヒターノ(スペインのロマ民族)の音楽とラテン音楽、さらにはポップやロックの要素を融合させたジャンルです。彼自身はアルゼンチン生まれで、スペイン系の家族のもとで育ちましたが、バルセロナに移住後、ヒターノ文化に深く影響を受けました。

彼の音楽は、ヒターノの伝統的なリズムと白人社会の音楽的要素を組み合わせることで、独自のスタイルを確立しました。特に「Gitanitos y morenos」などの楽曲では、ヒターノ文化への敬意を表しつつ、より広い社会的視点を持った歌詞を取り入れています。

つまり、彼は白人とヒターノのアイデンティティを融合させたというよりも、ヒターノ文化を尊重しながら、より広い音楽的背景を持つスタイルを作り上げた人です。

そのGitanitos y morenosという曲の生ライブ映像をご覧ください。一言で言い表すならば「人種の虹色の素晴らしい坩堝です」

https://youtu.be/Hh0WfgOP9Lg?si=ccYKcDFa4ltBdinM



Gato Pérezの生涯と音楽キャリア

- 生誕:1951年4月11日、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。

- 家族背景:スペイン内戦後に移住したスペイン系の家族のもとで育ちました。

- 音楽との出会い:幼少期に祖父とラジオを聴きながら音楽に親しみ、特にロックンロールに強く影響を受けました。

- スペイン移住:1966年に家族とともにバルセロナへ移住し、音楽活動を本格化。

- 音楽スタイル:カタルーニャ・ルンバをベースに、ラテン音楽やポップの要素を取り入れた独自のサウンドを確立。

- 代表曲:「Rumba de Barcelona」などが有名で、カタルーニャの音楽シーンに大きな影響を与えました。

- 死去:1990年10月18日、スペイン・カタルーニャ州で心筋梗塞により39歳で亡くなりました。


この経歴を見て、ん?って思った方は居られましたか?そうなんです。Gato Pérezは、スペイン人どころかカタルーニャ人でもありません。僕は日本人で京都人で、それだけの理由で京都が好きです。僕の知る限り、カタルーニャ人のアイデンティティは京都人の比ではありません。ですのでGato Pérezは前述したように、彼は白人とヒターノのアイデンティティを融合させたというよりも、ヒターノ文化を尊重しながら、より広い音楽的背景を持つスタイルを作り上げた人なのです。

僕に「リズムの感じ方の壁を越えなさい」優しくと教えてくれたのは、Gato Pérezであり、そしてRamonだったのだと今も思っています。

僕はこの動画の4:30~4:35のGato Pérezのリズムの取り方を意識しています。


そしてこちらは、その4:30~4:35のGato Pérezを意識している僕です。



Gato Pérezは「Gitanitos y morenos」その歌詞でこのように歌っています。
 「Gitanitos y morenos son los ases del compás」
(ヒターノとモレノはリズムの達人だ)
- 「Ahora vengo yo a cantar sereno, ahora vengo yo con sabor aunque no sea moreno」
(今、穏やかに歌う。モレノではなくても、味わいを持って)

僕は、ヒターノやモレノ、白人や黒人でもない黄色人種ですが、堂々と自分の解釈で、それが誤解であっても、異文化を尊重することを忘れずに、日本人の味わいで歌っていきたいとおもっています。