蛾と蝶

蛍光灯の波にはりついた 

小さな母が 影を見つめている 

どこから飛来してくるのか 糸は知れない

未だ夜の明かりに求められる

 138億年前の爆発 

母に光の形をとどめ 

その、荒々しい波が 

私の大脳皮質を凸凹に踏み潰す

手足や道具から 

人間が使う主語や意味がひしゃげ

 母は微笑みながら降り積もる 

性善や性悪が波を支配し 

現象が今静かにここにある

研ぎ澄まされた私の触覚の 

視界が保有している権限は 

闇の隅々に鎮み行使される 

微かに震える波動が参道に打ち寄せ

 希望は最後までじっと動かないでいる